山口銀行「やまぎん知財評価融資制度」について調べてみた
山口銀行では、山口県の中小企業が保有する知的財産(特許権)を活用して資金調達をできるサービスとして「やまぎん知財評価融資制度」を提供しています。
山口銀行は、山口県下関市に本店を置く銀行です。山口銀行を傘下に持つ山口フィナンシャルグループは、東京証券取引所プライム市場に上場しています。山口フィナンシャルグループの他の子会社として、広島県広島市のもみじ銀行や福岡県北九州市の北九州銀行があります。山口銀行の従業員数は不明ですが、資本金は10,005百万円、経常収益は104,592百万円、当期純利益は20,666百万円です。
なお、山口銀行「やまぎん知財評価融資制度」は、知的財産(特許権)の評価により、財務諸表に表れない事業性を融資の判断材料として融資するものであり、担保は原則不要です。本サービスは、平成27年4月1日より開始しております。
対象者
山口銀行「やまぎん知財評価融資制度」の対象者は、以下の要件を全て満たす中小企業事業者及び個人事業主です。
- 特許権を一つ以上保有しており、山口県内に住所また本店を有すること
- 特許庁の「知財ビジネス評価書」、又は㈱三菱総合研究所の「企業特許レポート(※)」における特許権の経済価値が5百万円以上あること
- 本件制度の利用残高がないこと(1事業者様につき、1口となります)
- 山口県信用保証協会の保証が受けられること
※㈱三菱総合研究所の「企業特許レポート」の作成費用(定額20万円)は、利用者負担となります。
用途
山口銀行「やまぎん知財評価融資制度」の用途は、事業資金(運転資金又は設備資金)です。
融資金額
山口銀行「やまぎん知財評価融資制度」の融資金額は、5百万円以上80百万円以内です。
ただし、「知財ビジネス評価書」、「企業特許レポート」における特許権の経済価値の100%が融資金額の上限となります。また、運転資金の場合は原則、月商の2ヶ月分まで、設備資金の場合は必要資金の範囲内です。
借入金額の下限が設定されていることから、特許権の評価額が500万円に満たない場合には本サービスを利用することができません。特許権が充実している企業向けのサービスといえます。
融資期間
山口銀行「やまぎん知財評価融資制度」の融資期間は、5年以内(据置可能期間:1年)です。
担保設定
山口銀行「やまぎん知財評価融資制度」では、知的財産(特許権)の担保は、原則不要です。
保証人
山口銀行「やまぎん知財評価融資制度」では、代表者の方のみ(法人の場合)が保証人となります。
実績
山口銀行「やまぎん知財評価融資制度」の実績として、株式会社 ジオパワーシステムの事例が紹介されています(参考:山口銀行「「やまぎん知財評価融資制度」の第一号案件について」、もうけの花道「技術の見える化と知財金融」)。ジオパワーシステムは、住宅の設計・施工・管理・販売を行う会社であり、本事例では、当社が保有する特許(地中熱を利用した空調システム)を分析・評価し、運転資金として3,000万円・5年の融資が実行されています。
本サービスの融資上限は、運転資金の場合、特許権の経済価値の100%、または月商の2ヶ月分のうち低い方となるので、ジオパワーシステムの特許権の経済価値は3,000万円以上の評価を受けたことになります。件数がそれほど多くなかったので、評価時点での知的財産権のポートフォリオを再現してみました。おそらく、以下の5件が有効な特許権として存在していたと思われます。
- 特許4944265「空調装置及びこれを用いた建物の空気循環システム」(ただし、2018/03/09に年金不納により消滅。スミコーホームズ株式会社(静岡県浜松市)との共有 )
- 特許4898279「マイナスイオン生成機能を備えた地熱利用型空調システム及び方法」(調査時点でも有効)
- 特許4970817「廃熱の蓄熱機能及び外気の温度調整機能を有する屋内換気システム」(調査時点でも有効)
- 特許4988205「建物の冷暖房システムに使用される地中熱交換器、及びその防食方法」(調査時点でも有効)
- 特許4744802「建物内の循環調湿機構」(ただし、2021/05/20に年金不納により消滅)
単に頭割りすれば1件平均600万円以上と評価されたことになりますが、それぞれの特許権が「知財ビジネス評価書」ないし「企業特許レポート」でどのように評価されていたのか気になるところです。1.については、おそらく融資期間中に年金を支払わずに消滅させているので、事業面での貢献は他に比べて低かったのかもしれません。共有特許権でもありましたし。逆に、2.~4.については調査時点でも年金を払って生かし続けていることから、事業面での貢献が相対的に高いのではないかと予想されます。
なお、もうけの花道の動画によれば、本サービスの利用実績は、収録時点までにジオパワーシステムの他に2件あったとのことです。
参考資料
※本記事は、以下の参考資料に基づいて作成しております。最新のサービスとは内容が異なる可能性がありますので、ご利用を検討される場合は本サービスの提供主体に必ずご確認をお願いします。
- 山口銀行「「やまぎん知財評価融資制度」の取扱開始について」
- 山口銀行「「やまぎん知財評価融資制度」の第一号案件について」
- 山口フィナンシャルグループ「有価証券報告書 ‐ 第18期(2023/04/01 ‐ 2024/03/31)」
- もうけの花道「技術の見える化と知財金融」