知的資産とは
このブログでは、「知的資産」をメインテーマの1つとして扱っていきたいと思います。
「知的資産って何?」、「知財とどう違うの?」なんて声が聞こえてきそうです。
そこで、この記事では知的資産について私なりに整理をします。
結論として、私は、「知的資産とは、経営資源のうちカネ・モノとカネ・モノに対する権利を除いた要素である」くらいの捉え方をしています。
そして、経営資源である知的資産を活用して収益を生み出していくには、知的資産の可視化が重要となります。
しかし、知的財産権のフレームだけでは狭義の知的資産を捉えられないので、より多角的なアプローチが必要と考えています。
1.「知的資産」と「知財」
知的資産を可視化するには、まず知的資産とは何かを理解しなければなりません。
「知的資産」をWeb検索すると、すぐに経済産業省のWebページに辿り着きます。
https://www.meti.go.jp/policy/intellectual_assets/teigi.html より引用
このWebページでは、「企業に固有の知的資産を認識し、有効に組み合わせて活用していくことを通じて収益につなげる経営を「知的資産経営」と呼びます。」と説明されています。
ただし、各分類に入る資産の具体例は示されているものの、各分類の定義は特に示されていません。
知財も、知的財産と知的財産権として2種類の資産に区別されています。
以下、上の図の各分類について私なりに整理していきます。
2.無形資産
無形資産は、法律等による定義はなさそうなので、文字通り、形のない資産と捉えることとします。
つまり、経営資源のうち有形資産であるカネ(現預金や金融資産)とモノ(不動産、在庫や各種設備)以外の要素を指しているとの理解です。
そして、上掲の図では、狭義の無形資産(知的資産に入らない無形資産)として、「借地権」、「電話加入権」が挙げられています。
この趣旨は、おそらく、「土地」や「電話」などの有形資産に対する権利(使用権)は、形のない資産ともいえるけど、実態としては有形資産と非常に近いため、知的資産からは除外して考えるべき、ということかなと思います。
3.知的財産権と知的財産
「知的財産」については、知的財産基本法の第2条第1項、「知的財産権」については、知的財産基本法の第2条第2項の定義が知られています。
まとめると、「知的財産とは、(1)人間の知的創造活動により生み出されるもの、(2)事業活動に用いられる商品等表示、または(3)技術上もしくは営業上の情報」、「知的財産権とは、知的財産に関して認められる権利」といった感じでしょうか。
まあ、具体例を見たほうがわかりやすいですね。
特許庁のWebページにわかりやすい図がありましたので引用します。
https://www.jpo.go.jp/system/patent/gaiyo/seidogaiyo/chizai02.html より引用
実際上は、知的財産権の具体例(特に、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、営業秘密に関する権利、著作権あたり)を頭に入れておいて、知的財産は知的財産権のタネと認識しておくぐらいがよさそうです。
知的財産権は、多くの場合、権利内容が公示されたり、営業秘密管理が必要であったりするため、存在が知覚しやすいです。
しかし、知的財産権として保護してもらう(権利化)には出願等の手続きが要求されることが多く(著作物の創作時点で発生する著作権は除く)、その前提として手続きの対象となる知的財産を知覚する必要があります。
企業が知的財産を知覚することが困難なケースでは、弁理士の力を借りるということも有効です。
弁理士は知財の専門家であり、知的財産権のフレームを利用して知的財産を可視化する手助けができます。
知的財産権は、法的保護が認められる点で、他の知的資産とは法律上の扱いが大きく異なります。
一方、知的財産権は、存続期間の満了や無効審決等の条件で失効する不安定な側面もあります。
4.知的資産
知的資産は、無形資産から狭義の無形資産を除いた残りの要素ということになります。
必然的に様々な要素が含まれます。
狭義の知的資産(知的財産に入らない知的資産)は、企業を構成する人や組織に蓄積された能力、顧客、提携先、供給者等といったステークホルダーとの関係性、などの重要な要素を含んでおり、多くのケースでは普段は目立たないながらも事業に大きく貢献しているものです。
しかし、これらの知的資産を、有効に活用するには、その前段階として、自社の保有する知的資産を可視化しなければなりません。
前述のように、知的財産の可視化には、弁理士などの知財専門家が得意とする知的財産権のフレームが有効でしょう。
一方、狭義の知的資産は、知的財産権のフレームでは捉えられず、例えばビジネスモデルやバリューチェーンの分析などの別のアプローチが必要となるでしょう。
5.まとめ
最後に、上記の内容をまとめます。
・知的資産とは、経営資源のうちカネ・モノとカネ・モノに対する権利を除いた要素である。
・知的資産経営には、知的資産の可視化が重要である。
・知的財産権のフレームだけでは狭義の知的資産を捉えられないので、知的資産の可視化にはより多角的なアプローチが必要である。