豊和銀行「知的財産担保融資」について調べてみた

2025年2月20日 2025年2月22日

所長

　豊和銀行では、大分県、福岡県、熊本県の中小企業等の皆様が、保有する特許権・実用新案権・意匠権・商標権・著作権等の知的財産権を担保として資金調達をできるサービスとして、知的財産担保融資を提供しています。

　豊和銀行は、大分県に本店を置く銀行です。福岡証券取引所に上場しており、従業員は511人、資本金は13,495百万円、経常収益は10,465百万円、当期純利益は877百万円です（参考：豊和銀行「有価証券報告書－第106期(2023/04/01－2024/03/31)」）。

対象者

　豊和銀行「知的財産担保融資」の対象者は、大分県、福岡県、熊本県内に本社または主たる営業所を有し、特許権・実用新案権・意匠権・商標権・著作権等の知的財産権をお持ちの法人、個人事業主（業種は問いません）です。

融資金額

　豊和銀行「知的財産担保融資」の融資額上限は、知的財産権の評価額に一定割合を乗じた金額です。

　本サービスでは、スタンダード版と簡易版の二種類のメニューが用意されていて、メニューによって知的財産権の価値評価の内容・費用、上記の「一定割合」が異なります。具体的には、以下の表に示すとおりです。

豊和銀行「知的財産担保融資リーフレット」より引用

知的財産権の価値評価

　豊和銀行「知的財産担保融資」では、外部評価会社（株式会社パテント・ファイナンス・コンサルティング）が知的財産権の価値評価を行います。価値評価は、以下のフローで行われ、スタンダード版では約3週間の期間と100万円前後の費用（交通費・担保設定費用は別途）がかかります。簡易版では約2週間の期間と30万円前後の費用（交通費・担保設定費用は別途）がかかります。

豊和銀行「知的財産担保融資リーフレット」より引用

スタンダード版と簡易版のどちらを選ぶべきか？

　本項では、スタンダード版と簡易版のどちらを選ぶべきか、についての判断基準を述べます。なお、本項は公開情報に基づく私的見解であり実態と異なる可能性がありますので、本サービスを利用される場合は必ず豊和銀行に必要な情報を確認して各自ご判断くださいますようお願いします。

　第1に、1週間とはいえ評価期間が異なるので、資金調達の必要なタイミング次第では、簡易版しか選択肢がない状況があり得ます。

　第2に、評価費用が約70万円違うので、資金調達コストとしてはスタンダード版の方が高くなります。資金需要を満たせるなら、簡易版の方が調達効率は高いです。ただし、スタンダード版の評価結果そのものにも何らかの価値を見い出しているならその点は考慮すべきでしょう。

　第3に、融資上限額ですが、結論としてはスタンダード版の方が簡易版に比べて高くなるケースが多いと思われます。評価アルゴリズムの詳細は不明ではありますが、簡易版の方が不確定要素が多い分、保守的な評価に寄りがちと予想されるので、ベース部分となる評価額はスタンダード版の方が高く算定されやすいのではないでしょうか。さらに、評価額に乗じられる「一定割合」も、50％と30％とで差があります。

　自社の知的財産権が潤沢で調達希望額が低いなら簡易版で十分ということもあり得るでしょうし、自社の知的財産権がそこそこ程度である場合や調達希望額が低くくない場合はスタンダード版を選択しないと資金需要を賄えないケースもあるでしょう。なお、自社の知的財産権が乏しい場合には、資金調達コストの負担が無視できず調達効率が悪くなるので、本サービスはマッチしないと思われます。

　本サービスの利用にあたってどのくらいの知的財産権が必要かは公開情報から正確には分かりませんが、豊和銀行「「知的財産担保融資」の取組について」で紹介されていた株式会社ＪＵＳＴ．ＷＩＬＬのケースは参考になりそうです。J-PlatPatで調査したところ、株式会社ＪＵＳＴ．ＷＩＬＬの保有する特許権のうち3件に質権を設定されていることを確認できました。質権者の確認まではしておりませんが、おそらく知的財産担保融資の結果として質権が設定されたと考えるのが自然でしょう。個々の特許権の価値は異なるため一概には言えませんが、3件というボリュームは1つの目安となるかと思われます。