北洋銀行「ほくよう知的財産権活用融資」について調べてみた

 北洋銀行では、北海道の中小企業等の皆様が、保有する特許権等の知的財産権を活用して資金調達をできるサービスとして「ほくよう知的財産権活用融資」を提供しています。

 北洋銀行は、北海道札幌市に本店を置く銀行です。東京証券取引所プライム市場及び札幌証券取引所に上場しており、従業員数は2371人、資本金は121,101百万円、経常収益は106,601百万円、当期純利益は12,819百万円です(参考:北洋銀行「有価証券報告書 ‐ 第168期(2023/04/01 ‐ 2024/03/31)」)。

 なお、北洋銀行「ほくよう知的財産権活用融資」は、知的財産権の評価により、業績や財務内容には現れない技術力や商品の強み等いわゆる「稼ぐ力」に対して融資するものであり、知的財産権に担保を設定しません。本サービスは、平成27年10月16日より開始しており、知的財産を活用した融資商品としては北海道内初の取り組みです。

対象者

 北洋銀行「ほくよう知的財産権活用融資」の対象者は、以下の条件を満たす事業者です。

  • 北海道内に本社または主たる営業拠点を有している、法人・個人事業主であること
  • 特許権等の知的財産権を有しており、北洋銀行が指定する弁理士、特許庁等の外部評価書を取得できること(借入の申し込みは外部評価書の評価日から1年以内)

借入金額

 北洋銀行「ほくよう知的財産権活用融資」の借入金額は、10百万円以上です。ただし知的財産権の評価額を上限とします。

 借入金額の下限が設定されていることから、知的財産権の評価額が1000万円に満たない場合には本サービスを利用することができません。知的財産権が充実している企業向けのサービスといえます。

借入期間

 北洋銀行「ほくよう知的財産権活用融資」の借入期間は1年以上であって、運転資金の場合は7年以内、設備資金の場合は10年以内です。ただし、知的財産権の存続期間内の扱いとします。

担保設定

 北洋銀行「ほくよう知的財産権活用融資」では、知的財産権の担保取得はいたしません。

実績

 北洋銀行「ほくよう知的財産権活用融資」の実績として、株式会社 東宏の事例が紹介されています(参考:北洋銀行「「ほくよう知的財産権活用融資」の第一号案件として株式会社 東宏 様に融資を実行しました」)。本事例では1億円の融資が実行されています。以下に、参考資料から、東宏の会社概要と融資のロジックについて引用します。

 当社は、昭和45年創業の建設資材商社で、トンネルの養生工法に関する独自技術を開発することで、多数の特許を保有し開発型の事業展開を図っています。

 当行は、当社の以下の強みを高く評価し、北海道新幹線の延伸やリニア新幹線延長などにより、更なる 成長が期待できる企業として融資を実行しました。

  • トンネル工事関連を主体とする独自の技術と高い商品開発力
  • 他社との明確な差別化による高いシェア
  • 主力商品である「トンネルバルーン工法」に加え「セントル養生工法」「アクアカーテン工法」など、 様々な新技術の開発への積極的な取り組み

 本サービスの借入上限は、知的財産権の評価額なので、東宏の知的財産権は1億円以上の評価を受けたことになります。評価時点での知的財産権のポートフォリオを再現するのは手間がかかるのでそこまではやりませんが、本記事作成時点では、東宏は、47件の有効な特許権を保有しており、特許分類から察するにその殆どがトンネル工事関連と思われます。単独名義の特許権もありますが、大林組、大成建設、安藤・間、東日本旅客鉄道等の様々な大企業との共有名義の特許権も散見されました。共有名義であることは、権利の使いやすさに関してマイナス面もありますが、大企業との共同開発実績を証明しやすいというプラスの側面もあり、共有名義が評価にどのように影響したのか気になるところです。

参考資料

 ※本記事は、以下の参考資料に基づいて作成しております。最新のサービスとは内容が異なる可能性がありますので、ご利用を検討される場合は本サービスの提供主体に必ずご確認をお願いします。

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