ガーデンのビジネスモデルや知財を分析してみた

 株式会社ガーデン(以下、「ガーデン」)は、2025年3月13日放送のテレビ東京の番組「カンブリア宮殿」で取り上げられました。本記事では、番組の内容に加え、各種の公開情報に基づいてガーデンについて私なりの考察をしました。

 ガーデンのビジネスモデルのポイントは、一等地の開拓力と効率化された店舗オペレーションにあると思われます。また、知財活動の動向によると、ガーデンは、将来的に、「カナダ進出」、「広告事業への参入」、「回転寿司プレミアム海王のテコ入れ」をやりたいのかもしれません。

会社概要

 ガーデンは、横浜家系ラーメンの「壱角家」、讃岐うどんの「山下本気うどん」など10以上のブランドで外食店舗を運営する会社です。

 ガーデンの創業者・現社長である川島賢氏は、元々、知人から埼玉県の赤字のカラオケ店を居抜きで譲り受けてビジネスを開始しました。川島氏は、カラオケ店のビジネスを軌道に乗せたことを機に、2000年、株式会社マック(「カラオケマック」の会社)を設立します。2003年、マックは、飲食事業に参入し、暫くはカラオケ事業との二刀流となります。2015年、ガーデンが、マックの持ち株会社として設立されます。2017年、ガーデンは、マックを「ビッグエコー」などを展開する株式会社第一興商へ売却してカラオケ事業から撤退し、以後は飲食事業に経営資源を集中しています。2024年、ガーデンは、東京証券取引所スタンダード市場へ上場しました。

 ガーデンの企業理念は、「イマをHAPPYに!」、経営理念は、「HAPPYな空間の提供」です。

業界

 ガーデンは、外食業界に属しますが、会社四季報業界地図2025年版及び日経業界地図2025年版には記載がありませんでした。番組によれば、従業員数が約300名、売上高が153億円、店舗数が128です。外食業界で比較的業種や規模感が近いと思われるのは、北海道・関東などのロードサイドを中心に「山岡家」を展開する丸千代山岡家です。丸千代山岡家は、従業員数が558名、売上高が265億円、店舗数が183です(参考:株式会社丸千代山岡家 有価証券報告書 ‐ 第31期(2023/02/01 ‐ 2024/01/31)、東洋経済新報社「会社四季報業界地図2025年版」)。

ビジネスモデル

 ガーデンのビジネスモデルを以下のビジネスモデルキャンバスにまとめました。

 ガーデンのビジネスモデルのポイントは、一等地の開拓力と効率化された店舗オペレーションであると思われます。

 まずは、一等地の開拓力について説明します。番組で紹介されていたように、営業マンが繁華街に出向いて優良な空き物件を地道に探す泥臭いやり方も実際に取り組まれているのだと推察されます。しかし、有価証券報告書によると、ガーデンは「店舗開発部において、店舗物件情報の早期取得を目的として不動産事業を行って」いて、「不動産事業を持たない競合他社に比べ物件取得に優位性があり」、「レインズ(REINS)等の物件情報に直接アクセスすることができるため情報取得までの時間が短く、かつ自社運営サイトである「飲食店居抜き買い取り.com」では個人オーナーが撤退する際、売却をサポートする事業も行っているため、当該サイトから一般市場に出ていない情報をいち早く獲得できて」いるのです。自社でも不動産事業や店舗売却サポートを組織的に行うことで、個人のスキルや頑張りにあまり依存せずに一等地を安定確保できるように仕組み化していることがガーデンの強みとしてしっくりきます。

 また、ガーデンは、効率化された店舗オペレーションを設計し、マニュアル化することで、自社人材の早期育成やフランチャイズビジネス展開が可能となっています。一等地の開拓力と組み合わせることで、事業の成長速度を高めているのでしょう。

知財

 ガーデンの知的財産の保有状況について順を追って説明します。
なお、知財について超ざっくりな解説が欲しい方はこちら

特許・意匠

 特許・意匠については、出願・登録ともに確認することができませんでした。飲食事業が中心ですから、やはり商標が主戦場になりますね。

商標

 商標については、49件の商標登録と、2件の商標出願とを確認することができました。また、今回は外国商標も少し調べてみました。これらの結果から、ガーデンの将来の事業の方向性として、「カナダ進出」、「広告事業への参入」、「回転寿司プレミアム海王のテコ入れ」の3つが見えてきました。

カナダ進出

 ガーデンは、現在、東南アジアを中心に海外展開をしています(参考:https://gardengroup.co.jp/foreign_operation/

 しかし、ガーデンの外国商標を調べると、東南アジアよりも寧ろ、カナダ進出への意欲が強く感じられます。例えば、「ICHIKAKUYA」、「HONKIUDON」、「YAMASHITA HONKI UDON」は国際出願(WIPO)に加えてカナダに直接出願されていますし、「壱角家」、「山下本気うどん」に関する合計3つのロゴ商標が外国ではカナダにのみ出願されています。

 利益率に拘るガーデンが、お金のかかる外国商標の権利化を目論見なく進めるとは考えがたいです。また、カナダの商標制度は使用主義ですので使用の目処が立っていない段階で出願するのも現実的ではありません。そうすると、ガーデンが近い将来に直営かフランチャイズかはわかりませんが何らかの形でカナダに進出することは十分にあり得るのではないでしょうか。

広告事業への参入

 ガーデンの商標は、ほとんどが「壱角家」、「山下本気うどん」、「回転寿司プレミアム海王」などの飲食事業ブランドの名称・ロゴか、「壱角千金」(金づくしの豪華ラーメン)、「本気バナナ」(バナナジュース)などの商品名に関するもので、基本形の押さえ方をされています。これらの商標の中から興味深い登録商標として、「渋谷パンダ」(登録6608911)を発見しました。

 「渋谷パンダ」は、用途(指定役務)として、他のガーデンの商標には見られない「広告業」等を掲げています。調べると、どうも、この渋谷パンダというのは、渋谷センター街にある「渋谷ガーデンビル」の愛称として定着させたいという意図があるのかなと感じました。

Xの@garden_bldgのプロフィールより引用

回転寿司プレミアム海王のテコ入れ

 ガーデンは、直近で、「回転寿司プレミアム海王」関連で2件の商標出願(商願2025-000510、商願2025-000511)をしています。ただし、ガーデンは、2012年に成立した「PREMIUM 海王」の商標権(登録5532759)を保有しているため、上記の商標出願は、回転寿司プレミアム海王のブランド再構築の意図が背景にあると思われます。

 一般論として、ロゴの変更等により新たに商標出願することは珍しいことではありませんし、ガーデンとしても「壱角家」や「山下本気うどん」などの主力ブランドについてはロゴ等をリニューアルして出願・権利化しています。しかし、回転寿司プレミアム海王の例を敢えて取り上げるのには理由があります。回転寿司プレミアム海王は、現状ではお台場の1店舗しか存在せず、フランチャイジーの募集も積極的にはしていないので、ガーデンが展開するブランドの中で重要なポジションを占めているとは考えがたく、どちらかというと日の当たらないポジションにすら見えます。

 利益率に拘るガーデンが、大した金額ではないとはいえ、さほど重要でないブランドのためにロゴの刷新や商標権の取得に労力とコストをかけるのは違和感があります。そうすると、ガーデンが、回転寿司プレミアム海王に対して何らかのテコ入れを計画しているのではないかという可能性が浮かびます。現在のお台場の店舗は、インバウンド含む観光客向けのお店として運営されているようなので、もしかするとこれらのターゲット層により特化した店舗・メニュー開発をしているのかもしれません。

 素人目で見ると、回転寿司業界は、スシロー、くら寿司、はま寿司などのガリバーがひしめくレッドオーシャンですが、ガーデンには勝ち筋が見えているのかもしれません。

 なお、ガーデンの有価証券報告書では、全社売上に対するラーメン事業の売上比率が高い(58.5%)ことが事業展開及び提供サービスに関するリスクの1つとして明記されており、山下本気うどんの新規出店とフランチャイズ事業の推進により市場及び外部環境の変化に影響を受けにくい事業ポートフォリオの構築を図っていると説明しています。もしかすると、回転寿司プレミアム海王のテコ入れも、山下本気うどんやフランチャイズ事業に次ぐ1つの選択肢として水面下で動きがあるのではないでしょうか。

知財まとめ

 まとめると、ガーデンの国内外の商標の動向からすると将来の事業の方向性として、「カナダ進出」、「広告事業への参入」、「回転寿司プレミアム海王のテコ入れ」の3つがあり得ます。

まとめ

 ガーデンのビジネスモデルのポイントは、一等地の開拓力と効率化された店舗オペレーションにありそう。

 ガーデンは、将来的に、「カナダ進出」、「広告事業への参入」、「回転寿司プレミアム海王のテコ入れ」をやりたいのではないだろうか。

参考資料

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