平成エンタープライズのビジネスモデルや知財を分析してみた

 株式会社平成エンタープライズ(以下、「平成エンタープライズ」)は、2025年4月24日放送のテレビ東京のカンブリア宮殿で取り上げられました。本記事では、番組の内容に加え、各種の公開情報に基づいて平成エンタープライズについて私なりの考察をしました。

 結論として、平成エンタープライズのビジネスモデルのポイントは、観光・飲食・宿泊などの関連施設を保有していることと思われます。平成エンタープライズは、夜行バスの快適性向上のための構造に関する2件(特許6306122、特許5847382)を含む5件の特許権を保有しており、はとバスなどの競合に比べて特許活動を積極的に行っていると考えられます。

会社概要

 平成エンタープライズは、ツアーバスや夜行バス・高速バスなどの運行のほか、観光ツアーの企画販売、などを事業とする埼玉県の会社です。

 平成エンタープライズは、現社長である田倉貴弥氏が1992年に創業しました。当初はバス運行が主でしたが、その後に自社企画の販売も手がけるようになります。

 平成エンタープライズの企業理念は、以下のとおりです。

FANTASTIC STORY
私たちの事業を通じて関係した方々全員を幸せに

業界

 平成エンタープライズは、バス業界ないし旅行業界に属すると思われますが、会社四季報業界地図2025年版及び日経業界地図2025年版には記載がありませんでした。売上高は96億円であり、はとバス(118億円)と近い規模といえそうです。

ビジネスモデル

 平成エンタープライズのビジネスモデルを以下のビジネスモデルキャンバスにまとめました。

 ポイントは、観光・飲食・宿泊などの関連施設を保有していることと思われます。

 自社企画ツアーに自社の関連施設の利用を組み込むことは、提供価値やコストを柔軟に設計できるという面では強みと捉えられます。一方で、関連施設の維持費やそこで働く人たちの人件費が固定費としてかかってくるという面もあります。自社企画ツアーが売れている局面では利益を確保しやすいですが、反面、自社企画ツアーの販売が不振となると一気に損失が膨らむおそれがあるといえそうです。番組では、平成エンタープライズは、定員が異なる複数のバスを抱えており、ツアーの参加人数が少数でも催行可能と説明していました。顧客目線からキャンセルをなるべくしないという側面ももちろんあるのでしょうが、自社の関連施設をツアーに組み込んでいる都合上、キャンセルとするよりも少人数でも催行して売上を立てた方がトータルで損益的にプラスであるという判断もあるのかもしれません。

知財

 平成エンタープライズの知的財産の保有状況について順を追って説明します。
なお、知財について超ざっくりな解説が欲しい方はこちら

特許

 5件の特許登録を確認することができました。内訳としては、バス車内の構造に関するものが3件、集合寝台(カプセルホテル等)の構造に関するものが1件、広告付きの物品預り用タグに関するものが1件でした。

  比較対象として、はとバスは、過去に実用新案登録が1件あったものの、調査時点で有効な特許や実用新案はないことから、平成エンタープライズは積極的に特許活動をしているといえそうです。

 バス車内の構造の特許は、夜行バス・高速バスの快適性向上のための構造に関するものが2件(特許6306122、特許5847382)あり、差別化要素を特許で保護しようとしていると推察されます。残りの1件は、バスを改造して製作する移動施設に関するものであり、ややニッチな用途と見受けられます。

 平成エンタープライズの事業は、飲食店などの旅行関連施設に多角化していることは番組でも触れられていましたが、同社のWebサイトによるとドミトリーと呼ばれる相部屋をメインとした簡易宿泊施設「ホステルわさび」も運営しているそうです。集合寝台に関する特許(特許6001205)は、「ホステルわさび」で使用されているのでしょうか。

 物品預り用タグの特許(特許5732629)については、実際に使用しているかは不明でしたが、登録から約10年経っても年金を支払って存続させていることから、相応の価値を見出していると思われます。

商標

 35件の商標登録と1件の商標出願を確認することができました。最も出願日が新しいものは、「ジャムージー」です。おそらく、ジャムとスムージーを掛け合わせた言葉かと思われます。Web検索をすると、どうやらストロベリーファーム ベリーベリーベリーという施設で提供されているようです(https://www.instagram.com/158berryberryberry/p/DGXwPI8T5ab/?img_index=1)。そして、このベリーベリーベリーの母体が平成エンタープライズとのことでした(https://berryheg.com/about-farm/)。平成エンタープライズの商標出願・登録の動向をチェックしていれば、同社が今後手がける観光関連施設やそこで提供される商品・サービスが垣間見えるかもしれません。

意匠

 過去に、平成エンタープライズ名義で、「車両用ホイールナットカバー」の意匠登録が1件(意匠登録1506111)ありましたが、年金不納により現在は消滅しています。

 バスの外観や車内の構造などを対象とした意匠登録があってもよさそうですが、見つかりませんでした。なお、はとバスも意匠登録はありませんでした。 

知財まとめ

 まとめると、平成エンタープライズは、夜行バスの快適性向上のための構造に関する2件(特許6306122、特許5847382)を含む5件の特許権を保有しており、はとバスなどの競合に比べて特許活動を積極的に行っていると考えられます。

まとめ

 平成エンタープライズのビジネスモデルのポイントは、観光・飲食・宿泊などの関連施設を保有していることと思われます。

 平成エンタープライズは、夜行バスの快適性向上のための構造に関する2件(特許6306122、特許5847382)を含む5件の特許権を保有しており、はとバスなどの競合に比べて特許活動を積極的に行っていると考えられます。

参考資料

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