「株式会社ドムドムフードサービス」のビジネスモデルや知財を分析してみた

会社概要

 ドムドムフードサービスは、ハンバーガーを店舗で製造販売する会社です。
ドムドムフードサービスは、1970年創業のハンバーガーチェーンで、マクドナルドやモスバーガーよりも古いそうです(日本最古)。
最盛期には400店舗に達したもののその後は一時27店舗まで減少。
2018年に現社長が抜擢され、2021年から売上回復基調にあるそうです。

業界

 ドムドムフードサービスは、外食業界、特にファストフード業界に属すると思われますが、会社四季報業界地図2025年版及び日経業界地図2025年版には記載がありませんでした。
業界内の位置づけとしては、店舗数でいうとマクドナルド(国内約3000店)の1%程度であり、フレッシュネス(国内約150店)の2割くらいです。
出店地域は全国ですが、規模感としては例えばラッキーピエロ(国内20店舗弱)などのご当地チェーンの方が近そうです。
大手のような規模の経済は働かせづらく、かといってご当地チェーンのような地域集中による効率化もしづらいという立場にあるといえそうです。

ビジネスモデル

 ドムドムフードサービスのビジネスモデルを以下の図にまとめました。

 ポイントは、大きく2つあろうかと思われます。

 第1に、ソフトシェルクラブを丸ごと使った「丸ごと!!カニバーガー」に代表される突き抜けた個性のハンバーガーの毎月投入です。
個性派バーガーの開発を支えるのは、2~3名程度という小規模な商品開発チーム、月3回もの試食会、社長の選球眼、そしてチャレンジを奨励する組織文化のようです。
この組織文化は、社長の「やってみれば」精神と、のべ50種類もの個性派バーガーの成功体験(目標売上を達成)により培われてきたのだと思われます。
「おいしいは最低限の約束」として+αのインパクトがある個性派バーガーが毎月発売されることは既存顧客の再来店を促したり、話題性に惹かれた新規顧客の獲得につながっていると推察されます。
一方で、これだけ新商品が多いと、商品開発コストはかさみますし、ファストフードチェーンにとって重要なマニュアル化や機械化に適さず人件費を抑えにくいという負の側面も忘れてはなりません。
時間の経過とともに、アイデアのネタ切れや顧客の慣れにより投資効果が下がる懸念もあります。

 第2に、ブランドロゴであるどむぞうくんの魅力を活かした新規顧客獲得です。
ファストフードチェーンにブランドロゴ的なキャラクターが存在することは珍しくないですが(例えばドナルド・マクドナルドやカーネルおじさん)、どむぞうくんはTシャツやタオルなどのグッズが商品として販売されており、総売上の7%を超えるということなので特異な例といえそうです。
どむぞうくんに惹かれてグッズを買い、そこを入口としてドムドムハンバーガーを認知し来店する、といった新規顧客獲得ルートが生まれており、本業への貢献も大きそうです。
また、一般にキャラクターグッズは利幅が取りやすいので、どむぞうくんグッズの利益率も高いものと予想されます。
スタッフからどむぞうくんグッズの新商品提案があるなど、ここでも先述のチャレンジを奨励する組織文化が活きているようです。
一方で、どむぞうくんの人気が高まると模倣品(無許諾のキャラクターグッズ)が登場し、キャラクタービジネスが荒らされたり、新規顧客獲得機能が毀損される懸念があります。
どむぞうくんの認知度向上という点では悪い面ばかりではなさそうですが、イメージ低下につながる事態は避けたいです。
また、認知度向上を加速させるために、様々な提携先にキャラクターグッズやコンテンツの作成・販売を依頼する機会も増えるでしょう。
いずれにせよ、他者によるどむぞうくんの使用をコントロールするための知財権は確保したいところです。

知財

 ドムドムフードサービスの知的財産の保有状況について順を追って説明します。
なお、以下に示す画像は全てドムドムフードサービスの登録商標です。

商標

 商標について、ドムドムフードサービスは、21件の商標権を保有しているほか、1件の商標出願が審査中です。

 気になるどむぞうくんですが、まず1997年に最初と思われる商標出願がされています(登録4210423)。

しかし、これは「飲食物の提供」、つまり本業を用途(指定商品・役務)として出願されていますので、この段階ではグッズ展開は特に予定されていなかったのでしょう。

 その後しばらく空いて、2017年に新しい用途で商標出願がされました(登録6059552)。

新たに加わった用途は食品等に関するものが中心で、やはりグッズ展開は意識していなさそうです。

 さらに2年後の2019年、ついに被服等を用途に加えた商標出願がされました(登録6059552)。

その後も、新しい用途(スマホカバー、かばん等)について繰り返し商標出願→商標登録されています。

 そして、2023年には別のロゴ画像で、広範なグッズをカバーする商標出願がありました(登録6774149)。

 このほか、調査時点では、被服等を用途とする上記ロゴ画像の商標出願が審査中でした(商願2023-135878)。
別出願とされた理由は、想像するに、出願前の商標調査により類似商標が発見され、審査がすんなりとは通らないことを見越してのことかもしれません。

 以上の流れを見ていると、1997年の段階では単なるブランドロゴの一部に過ぎない扱いだったであろうどむぞうくんのキャラクターグッズ展開を決断し、新規顧客獲得機能を果たすブランドとして育て上げたのは、お見事と思います。

特許及び意匠

 特許及び意匠について、ドムドムフードサービスが保有する権利および出願はありませんでした。そもそも、業界的にもあまり活発な知財活動はされていなさそうです。
一応、ハンバーガー業界の事例として、株式会社モスフードサービスが、NECプラットフォームズ株式会社と共有で保有する特許権として、「POS端末、商品名称表示方法およびプログラム」(許4944422)及び「セットメニュー処理システム及び処理方法」(特許4569909)を確認することができました。

 ドムドムフードサービスの場合、どむぞうくんグッズを意匠権で保護するというやり方もありそうですが、意匠権はデザイン・物品毎に取得する必要があるし存続期間も有限なので、商標権に比べるとコスパが悪いという判断をしたものと推察します。

知財まとめ

 まとめると、ドムドムフードサービスは、どうむぞうくんロゴの商標権を着実に確保し、グッズの模倣品対策・コラボ先へのライセンスのための体制を準備しているといえそうです。

まとめ

 ドムドムフードサービスのビジネスモデルのポイントは、個性派ハンバーガーを毎月投入できる人的・組織資産にありそう。
 どむぞうくんは、新規顧客獲得機能を果たす特異な資産であり、ドムドムフードサービスはどうむぞうくんロゴの商標権を着実に確保し、グッズの模倣品対策・コラボ先へのライセンスのための体制を準備しているといえそう。
 ドムドムフードサービスは、将来的にどむぞうくんの顧客吸引力を強化し、個性派ハンバーガーのみに頼らない集客を目指しているのではないだろうか。

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