「株式会社サラダコスモ」のビジネスモデルや知財を分析してみた

 株式会社サラダコスモ(以下、「サラダコスモ」)について分析をしました。
サラダコスモは、2024/2/8放送のテレビ東京の番組「カンブリア宮殿」で取り上げられました。
本記事では、番組の内容に加え、各種の公開情報に基づいてサラダコスモについて私なりの考察をしました。

会社概要

 サラダコスモは、もやしやカット野菜などの野菜製品を製造販売する会社です。

 Webサイトによると、サラダコスモは、創業当時は、清涼飲料水のラムネ製造・販売が主業であり、もやし製造は副業であったそうです。
現社長が、1973年に業界初となる無添加・無漂白もやしを開発し、1980年からはもやし専業となったようです。

業界

 サラダコスモは、日経業界地図2025年版では「農ビジネス」の「スプラウト類」に分類されていました。
同じく、スプラウト類に分類されている株式会社村上農園(以下、「村上農園」)と比較すると、サラダコスモの売上高は2倍以上(203億対90億)ですが、村上農園は豆苗などのスプラウト単品に特化しており、もやしやカット野菜も販売するサラダコスモと単純に比較はできません。

ビジネスモデル

 サラダコスモのビジネスモデルを以下の図にまとめました。

 ポイントは、大きく2つあろうかと思われます。

 第1に、徹底したコストダウンです。
番組中では、自社工場への積極投資、産業廃棄物となるもやしカスの収入への転換策、海外での原料自社生産の挑戦などが紹介されていました。
さらに、おそらく公開はできないのでしょうが、工場内で人間が行うオペレーションも相当に合理化されていることが想像されます。
また、カット野菜などのもやしミックス製品が好調らしく、もやしの総生産量が増えることによる規模の経済や経験曲線の効果による好循環もあるのでしょう。

 第2に、新商品がボトムアップで提案される自律型組織です。
番組中では、国産カット野菜を社長に内緒で試作していた従業員やペヤングとのコラボ商品を開発した従業員が紹介されていました。
中でも、カット野菜は、売上の4割にまで成長したとのことで、大成功といえそうです。
コストダウンを重視されていると聞くと何となく従業員がガチガチに管理されていて新しい試みがしづらそうな先入観がありましたが、サラダコスモでは挑戦に対して寛容な企業文化が根付いているようです。
この企業文化は、社長のお人柄によるところが大きそうですが、コモディティであるうえ顧客が価格に対して敏感なもやしのみを頼って収益を将来に亘って維持拡大していくことは難しく、次なる収益の柱を模索したいという切実な思惑も少なからずあるように想像します。

知財

 サラダコスモの知的財産の保有状況について順を追って説明します。

特許

 特許について、調査時点で有効な特許権が1件ありました(特許6949319、2016年出願)。
これは、「フィトケミカル高度含有アブラナ科スプラウト及びその生産方法」の発明であり、岐阜県との共有です。
同じく岐阜県との共同出願として、「ガーデンクレス由来成分を含む組成物及びその利用」(2019年出願)、「イソフラボノイド高度含有スプラウト及びその生産方法」(2015年出願)がありましたが、これらは残念ながら審査の結果、特許権が成立しませんでした。
余談ですが、村上農園も2007年に同様の高機能スプラウトの文脈で2件の特許出願をしておりますが、審査請求をしなかったため特許権が成立しておりません。

 なお、過去には、関連会社と思われる「サラダコスモ ユーエスエー コーポレーション」名義で、もやしの処理に関する特許権もいくつかありました(特許4401247、特許3481933、特許3503701、特許3606562)。これらは、いずれもここ数年で存続期間の満了により消滅しています。
もやしの処理については、コストダウンの観点からはサラダコスモにとって重要な技術分野といえそうですが、近年ではこの分野の特許出願はされていないようです。
侵害立証が難しい領域であるため秘匿化するように切り替えたのか、ある程度技術的に成熟してしまったのかは不明です。

 これらの特許動向から、サラダコスモは、ここ10年ほど、もやしなどのスプラウトに対して成分強化や加工食品とする形での高付加価値商品の研究開発に力をいれてきたように見受けられます。
実際、上記の特許権が活用されているかは不明であるものの、サラダコスモのHPには、機能性表示食品としてスプラウトを含んだ6製品が挙げられており、事業化できているようです。

 スプラウト単体(特にもやし)では、顧客が価格に対して敏感であるため安易な値上げは販売数量の減少により却って収益を損ないかねません。
一方、機能性スプラウトというフォーマットであれば、シンプルな製品に比べて顧客にとってコストがわかりにくくなり、競合製品との比較もしづらくなることから、提供価値を基準とした比較的高めの価格設定が受け入れられやすく、低コスト生産体制という自社の強みを組み合わせて高い収益が期待できそうです。
また、特許文献に言及があった、スプラウトを原料とした加工食品やサプリメントを製品化して新市場を開拓することも水面下で構想されているのかもしれません。

商標

 商標について、12件の商標権が存続しております。

 目を引く点として、機能性表示食品のうち4つが属するグループの名称である「子大豆もやし 芽ぐみ」が商標登録されています(登録6299696)し、機能性表示食品の1つであるブロッコリースルフォラファンスプラウトの包装に用いられている画像の商標も登録されています(登録6509954)。
他方、機能性表示食品以外のスプラウト単体製品やカット野菜製品については特に商標登録されていないようですので、これら製品に比較して機能性表示食品に力を入れていることが商標動向からも推察されます。

意匠

 意匠については、出願されておりませんでした。
業種的にもあまりなじまなさそうです。
きのこ生産で有名なホクト株式会社は、きのこ栽培用シートや包装用容器などの意匠登録をされていますが、むしろレアケースと思われます。
ただ、サラダコスモが将来的に加工食品に進出する場合にはパッケージ等の保護に意匠権活用する余地はあるかもしれません。

知財まとめ

 サラダコスモは、特許や商標の権利化動向によると、機能性スプラウトに力点を置いていることが感じられます。
もやしなどのスプラウトを低コストに生産できる体制を強みとして活かしながら、将来的には機能性スプラウトやその派生製品を収益の柱として育てていこうとしているように思われます。

まとめ

 サラダコスモのビジネスモデルのポイントは、徹底したコストダウンと新商品がボトムアップで提案される自律型組織にありそう。
 サラダコスモは、知財動向から判断すると、もやしなどのスプラウトを低コストに生産できる体制を強みとして活かしながら、将来的には機能性スプラウトやその派生製品を収益の柱として育てていこうとしているように思われる。

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